「美紗の気持ちが離れているのなら、勇太くんにはこれ以上美紗に関わって欲しくない。 だけど、そうじゃないじゃない。
・・・例えば、美紗が崖から落ちそうになっていて、勇太くんが崖の上から何とか美紗を助けようと、美紗の手を握って引き揚げようとしているとするじゃない?? 美紗ってね、勇太くんが力を振り絞る為にちょっと顔を顰めただけでも、『あぁ、辛いんだな。 申し訳ないな』って思ってしまう子なのよ。 『もういいよ、放していいよ』って言ってしまう子なの。 自分のせいで苦しむ人の顔を見ていられないっていうか・・・。 それが、大好きな人だったら尚更よね。 美紗は昔からそうなの。 ワタシが仕事で疲れて帰ってくると『ごめんね、ありがとうね』って、頼んでもないのにマッサージしてくれる様な子なの。
勇太くんには、美紗がどんなに『放していいよ』って言っても、それでも美紗の手を握っていて欲しい」

オレに強い視線を向ける、美紗のお母さん。