漂う嫌悪、彷徨う感情。


廊下の突当りを右に曲がると、自販機の前で飲み物を眺めている美紗の姿が見えた。

「美紗!!」

名前を呼びながら美紗に近付くと、美紗が振り向いた。

まだ目に涙を溜めたままの美紗。

「美紗、こういうのもうやめてよ。 わざと悪者になったりしないでよ。 美紗が辛そうにしてるの、見てらんない」

「・・・ごめんね。 すぐ辞められると思ったの。 だけど、後任がまだ見つからないって・・・。 もう辞めたいのに。 すぐにいなくなりたいのに。 辛い。 苦しい」

美紗の目から、大粒の涙が零れ落ちた。

オレは、『辞めたい』と苦しむ美紗を、上司の力を借りてまで留めている。

オレが、美紗を苦しめているのだろうか。

美紗は、とうとうと流れる涙をしきりに拭きながら、『ごめんね。 泣いてごめんね。 泣き止めなくてごめんなさい。 同情を引きたいわけじゃないんだ。 佐藤さんを責めたいわけでもないのに・・・。 ごめんなさい』と何度もオレに謝ると、何も買わずにどこかへ走って行った。

美紗を引き留める事が出来なかった。

オレが素直に手放せば、美紗は苦しみから解放されるのだろうか。