今でもポケットの中の携帯が振動する。



きっと送り主は七瀬先輩だ……。

だって、約束は今日のこれからなのだから。



下駄箱から正門まで水溜まりを避けながら歩くわたしと常磐君は、ほぼ同じタイミングでピタッと足を止めた。


桜色の傘が揺れたから。


視界の端っこでふわふわと長い髪が靡いた。



「っ、杏奈……?」


「やっ、八重~~~!!」



なんで杏奈がここに……?


わたしを見つけるなり傘を吹っ飛ばしてギュウッと強く抱きついてくる。