「オレ、心配しすぎなのか?」 「し、心配とは……」 ドキッと鼓動が大きな音をたてる。 繊細なダークブラウンの髪が肌を撫でるからくすぐったい。 「時間過ぎてもお前が来ないからだろ?」 確かに待ち合わせに遅れたのはわたしで、杏奈の緊急事態に遅刻の連絡どころではなかったけれど。 「なんかあったんじゃねぇかって。心配させんなよ、バカ」 「……っ」 さっきまでイタズラな子供みたいに資料を取り上げて笑っていた七瀬先輩が、急に声をひそめてそんなことを言うから。