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 「臥雲」

 名前を呼ばれた男は細い目をさらに細くした。

 「鷭、遅かったな」

 周囲には誰もいなかった。

 公園のブランコが一人でに揺れているのを眺めながら、鷭はため息交じりに言う。

 「礼から全てを聞いた」

 「…聞くまでもないことだ」

 独特の間の取り方で、音も無く歩き出す臥雲。

 その横を鷭が溜息を吐きながら歩いた。

 「甘言堂では今頃ヘビが彼女を苛めているのでしょうね」

 「…かごに閉じ込めて一生逃がさないんじゃなかったのか」

 彼女の存在を聞いた時、鷭はそう言っていた。

 当時の記憶を思い出し、鷭は困った様に笑った。