冷蔵庫を開けて、冷えたみかんゼリーを取りだす。


手の中で容器を包み込むようにして少しだけ常温に戻し、ふたを開けた。


暖房の前まで移動してそこでゼリーを口に運ぶ。


寒い季節に食べる冷たいものって、なんでこんなに美味しいんだろう。


口の中に広がるみかんの味に思わず頬がほころんだ。


冷えたゼリーだけじゃない。


アイスやわらびもちを冬に食べる事も好きだった。


暖房の前に座って冷たいものを食べるなんて変な子。


お母さんは苦笑いを浮かべてそう言っていたけれど、親友の紗英はこの美味しさを理解してくれていた。


肌寒い日の学校帰り、途中コンビニに寄ってアイスを買うあたしを見て『寒い日のアイスっていいよねぇ』と、言ってくれた。


その日、あたしと紗英は一緒に家まで帰り、一緒に毛布にくるまってアイスを食べたんだ。


あの日は今日ほど寒い日じゃなかったから、暖房器具はまだ出していなかった。


思い出して笑顔になった。


あの時だ、あたしが紗英に駿への気持ちを告白したのは。


2人で1枚の毛布を被ってアイスを食べる。


そんな少し不思議な体験をしたあたしと紗英の距離は、いつもよりも縮まっていたと思う。


『あたし、駿の事が好きなんだよね』


口の中にソーダ味が広がる中、あたしは普通の会話の延長のようにそう言った。


『え、うそ』


だけど紗英はとても驚いたように目を見開き、食べていたアイスから口を離した。