「ジンクス、今思い出した。人に見られたらダメだってこと、確かに聞いた気がする」


文章を小さく区切り、言葉が詰まらないように紡いでいく。


「あぁ、そっか」


「だから、書いちゃダメだよ」


そう言うと、聡樹が眉をハの文に下げてチョークを置いた。


黒板には『岡』の字が出来上がっている。


それは岡崎鈴の岡かもしれないし、違うかもしれない。


だけどあたしの中に勘があった。


あれはきっと、岡崎鈴、あたしの名前につく『岡』で間違いないと。


聡樹は無言で黒板消しを手に取り、『岡』を消していく。


あたしへの気持ちを消しているようにも見える。


聡樹があたしの事を考えてくれていると知ったのは、もう随分前の事だった。


あたしはその気持ちを知りながらも、聡樹と恋人同士になるのはなんか違う。


そう思い、ずっと気が付かないフリをしてきた。


そんな中、駿と出会った。


聡樹とは違い、駿の存在はあたしの中でどんどん大きく膨らんでいった。