教室内に足を踏み入れると、静かな視線が一斉に私に集まった。


こういう瞬間は本当に苦手だと思いながらも、教壇の横に立つ。


見渡す限り、担任の言った通り全体的にマジメな生徒が多い。


そんな中、嫌でも目に入るのは、教壇のすぐ前の席で机に顔を伏せている明るい茶色の髪。


前の学校では普通だった髪色も、この学校ではやけに目立つ。


放っておくと授業の邪魔になる恐れがあるから、教師の目の届く一番前のど真ん中に座らされているのかも。


マジメな子が多いってだけで、こういう生徒がいないってわけでもないらしい。


「じゃあ、自己紹介してください」


担任が丸投げしてくるので、仕方なく口を開く。


「高遠……」


私がそう言うと担任がこちらに視線を向けるので、すぐに間違えたと気付く。


「松井……姫乃です」


慣れない名前を口に出すと、ふいに目の前の茶髪の頭が起き上がった。


私の顔をジッと見つめたかと思うと、視線が上から下へと流れる。


「顔は90……超えてるな。90超えとか、久々見た。あーでも、スタイルは……70点代だな。背がもうちょいあれば90点代も夢じゃねえのに」


女子平均の157㎝は、この男にすると低いらしい。


というより、いきなり点数を付けてくるとか、失礼にもほどがある。