――僕は幼い頃から、弱虫だった。


僕が周りと違うことに気づいたのは、幼稚園の年長組になった、ある日の出来事がきっかけだった。




その日は、友達と一緒に砂場で山を作って遊んでいた。


楽しかったのは、最初だけ。


山が完成した刹那、誰かが僕に泥団子を投げつけた。


その誰かとは、年長組にいる生意気ないじめっ子で。


僕はいじめっ子が怖くて、泣き出しそうになった。



『ふ、ふぇ……っ』


『女みたいに、すぐ泣くんだな』



いじめっ子の笑い声に、涙がポロッと流れる。


口の中のじゃりじゃりとした気持ち悪い食感も、目に入った砂のせいで感じる痛みも、すぐに泣いてしまった僕の弱さも、嫌いだった。


いじめっ子は、せっかく作った山を遠慮なく壊した。



『や、やめてよ』


『は?聞こえねぇよ』



僕だけじゃなく、友達までも泣き喚く。