「……私、人混みって苦手なんだよー……」

「でも、ここまで来たら突撃あるのみ」

「うぅ……頑張る……」


小さく会話を交わしながら、どんどんと前へ進んでいく。

そして、私たちはなんとかバスに乗り込むことが出来た。


超ギリギリのタイミングだったみたいで、私たちの少し後ろに居た人たちは、次のバスに乗るよう誘導されている。



「わぁ……ギリギリだったねー……」

「うん、さすが俺」

「……って、その言い方フジヤマっぽいよ?」


「そりゃあもちろん、フジヤマっぽく言ったからね」



ふっと笑うYUKIを見て、私も笑う。

そのあと私たちは、それ以上の会話はしなかった。

混雑する車内で騒ぎたくなかったし、こういう場所でチャットの話は出来ないもんね……。

だから二人とも黙ったまま何も言わなかったけれど、それでも手はずっと握り合っていた。


……こうやって隣にYUKIが居ると、私はやっぱり『カップルみたい』って思うよ。

YUKIに恋してるとか、そういうのじゃないけどさ……それでも私は、『カップルみたい』って思っていたいんだ。


周りに居るカップルたちが幸せそうに笑ってるのを見たら、やっぱり羨ましいもん。

だから私も、その幸せな気持ちを味わってみたいって思うんだ。


YUKIは『兄妹みたい』って言ったけど、私は違うよ。

私は『カップルみたい』って思ってるよ。

……これ、YUKIには絶対言えないけどね。