「……そう、って言ったら?」


「受け取らない。」


「っ、」



キッパリ断られると、やっぱり辛いものがある。じゃあ何チョコなら貰ってくれるのさ。

"本命"ですって、渡したら…悠斗はどんな顔するの?


怖いじゃん、そんなの。


「代わりに、今年は俺が架純にチョコやる。」



「えっ、は…ちょ、なに?!」



言うなりポケットから取り出した小さい箱。それを私に『ん』と差し出す悠斗に、どうしていいか分からず受け取った。



こんな指輪でも入ってそうな箱に、何のチョコが?てか、なんで悠斗が私にくれるの?



バレンタインは、女の子から好きな男の子へチョコを渡す日、なのに。



「開けてみ?」


「…い、いいの?」


「おう。」




心臓が変にトクトク…と、加速して。
箱を開ける手が少しだけ震える。


寒いせいなのか、緊張しているせいなのか。
どちらにしても、今の私は悠斗から見ても分かるくらい震えているだろうな。




「………っ」


「これは、友チョコじゃねえけど。」



小さい箱の中。
チロルチョコが1つ。



いや、チロルチョコ1つとか最高に悠斗らしいんですけど。しかも、きなこもち。


大好きやつじゃん。



なんて、思ってた私はチロルチョコの下に何か隠れているのを見つけて、ソッ…とチロルチョコを持ち上げた。