小道の脇には澄んだ浅い川が流れ、村の子供たちが水浴びをし、鮎や鯉を追いかけしゃいでいた。

 最近の幼い子は白い肌をしているが、ここの子供たちは肌も黒く笑顔が眩しい。これぞ本来あるべき子供の健全な姿で、微笑ましかった。


 しばらく彼らを見ていたが、まだ太陽は高く、夏は盛りを迎えたばかりの猛暑だ。日差しはガラスのように照り光り、肌を刺す。私は吹き出した汗にたまらず木陰に駆け込んだ。

 幼い頃から毎年一度、盆には来ている馴染みの山村なので、ちょうど良い木陰の場所もほとんど知り尽くしている。

 今私が歩いているこの舗装されていない道の先には、木々のトンネルが続いている。このさらに奥を行くと森だ。

 畜産や農業の他に、猟師でもある祖父によると、ここには山から下りてきた猪、鹿、時には野犬も出るという。だが、道まで出てくるのは殆どまれだ。私は奥までは行ったことはないため、出くわしたことはない。


 思わず気が遠のくほどの日差しを避けて、森の入り口の木陰に入った。

 身体を焼いていた日差しは暴力的とも言えた。

 それから逃れた私は、目を瞑り、肺いっぱいに息を吸い込み、青い草木の匂いをかいだ。

 緑の湿った森は、連日の疲れを癒し、忘れさせるほどに穏やかな時間が流れている。