蛇の囁き




「……だけど、年に一日だけなら、あの山神たちも許してくれるだろう」

 白蛇様は独り言のように呟いた。注意してなければ聞き逃してしまいそうだった。

「ただし一年に二日も会えば……嫉妬深い山神たちは、きっと夏芽の命を取るだろう。どうする」


 なんと優しい誘惑だろう。歓びが全身に広がる。

 私は涙を拭った。白蛇様の菫青石の瞳の奥に、泣いて鼻と頬を赤くした少女が決意を秘めた表情でこちらを見つめていた。


「……また、会えるなら、一年に一日、会いに来ます。その次の年も、その次も、また会いに来ます」


 彼はそう答えた私の頭を無言で撫でた。

 髪を撫で、毛先を弄んだ後、更にその手が頬の曲線をなぞる。それが、徐々に下がる。指が唇に触れた瞬間、私は激しい胸の鼓動に苛まれた。