「こんな遅くにごめんね。」
困ったように眉を下げる彼に、私は思いきり両手を振った。
「いえいえ、とんでもない!わざわざご挨拶ありがとうございます。」
なんて親切な人なんだろう。
顔良し性格良し。好条件じゃないか。
「隣の部屋に引っ越して来た、東条 葵(とうじょう いつき)と言います。これから、よろしくね。」
天使のような微笑みの後に色々、と付け足す彼。
い、色々……?
不思議に思って眉をひそめた私に、彼は口端を軽く上げて妖しい笑みを浮かべると、勢いよく玄関のドアを閉めた。
な…っ、なに!?!
途端に思考も身体もフリーズする私。
反射的に後退りをするとバランスを崩して玄関マットに尻もちをついた。
首にかけていたタオルがひらりと床に落ちる。


