溺愛ENMA様

「私、いとこの岩瀬朱里を探しに来たんです。事故で意識不明になってしまって……。まだ二十歳なのに、死ぬには若すぎる。
彼女、うわ言で三途の川の話をしてたんです。だから絶対にこの辺にいると思うの」

短時間に出来るだけ要点を言いたくて、私はまとまりのない言葉を彼に伝えた。

「ねえ、あなたが本当に閻魔様なら、私のイトコを地獄になんてやらないで!ううん、彼女を死なせないでほしいの」

私が言い終えると、彼は再び徳利を口につけてゴクゴクと飲み、グイッと左腕で唇を拭った。

それから綺麗な瞳を私に向けると、形のよい唇を開いた。

「親不孝は地獄行きに値する。諦めろ」

冗談じゃない。

朱里は親不孝なんかじゃない!

「朱里は、将来弁護士になって困ってる人を助けるのが夢なの!!親不孝なわけない!!」