父上の術は絶大で、母上の寿命を普通の人間以上には出来た。

だがそれにも限界がある。

人としてはあまりにも長すぎる寿命を、母上は全うし、帰らぬ人となった。

さすがに遊び人の父上も、母上の死は堪えたらしく、代を俺に譲ると言い出した。

それ以来、俺を『閻魔』と呼び、自分は『閻王』と名乗った。

父上は偉大だ。

だが俺は、父上をどこかで憎んでいた。

人間の母上に惚れたのは自分なのに、先に老いていく母上を父上は相手にしなくなっていったんだ。

宮殿の離れにいる母上に、会いにも行かなくなった。

代わりに俺は毎日母上に会いに行った。

そんな俺に母上はいつも柔らかい微笑みを見せ、父上の事ばかりを聞いてきた。