溺愛ENMA様

勇気。

生き人に惚れて思いを伝えた、勇気。

ああ、閻魔の気持ちを私は……!

涙で目の前が滲み、私は鼻をすすった。

「お爺ちゃん、私……」

「さあさあ、早く漕ぎなさい。惚れた男が待っとるぞ」

「う、うん……」

私は涙を拭うと、遥か先の対岸に眼をやった。

閻魔にもうすぐ会える。

会ったら、ちゃんと好きって言おう。

先の見えない恋だけど、閻魔を好きだという気持ちは止められないと分かってしまったから。

※※※※

ようやく船が対岸に着いた。