「遅くなっちゃった……」



放課後。日直の仕事として先生の手伝いをしていたら、いつのまにか1時間近く経っていた。


早く帰ろう、とため息をついて廊下を歩く。夕焼けが廊下の窓から差し込んで、自分の影を形どる。




あれ……。



人気がないと思っていた廊下だけれど、少し遠くの方に人影がふたつ。


なんだか見覚えがあるそれは、目を凝らしてよく見たら、紘と麗奈先輩だった。


逆光で表情までは見えないけれど、ふわっとした黒髪も、着崩した制服も、気怠げな歩き方も全部、彼だ。


そしてもう1人は、細くて長い脚も、くるくるに巻いた髪も、全部可愛くて。


ふたりは社会科資料室のドアをガラリと開けて、中に入っていく。