私の気持ちなんてなにも知らずに、圭太は嬉しそうな、照れくさそうな顔で笑っている。
圭太にそんな顔をさせたいのは、私だったのになぁ。
私の前で見せるのはいつも通りの、無邪気な顔ばっかりだ。
「でも昨日もすごい優しくて、日直の仕事手伝ってくれたんだよ」
「へえ、良かったじゃん」
圭太と私は違うクラスで、慶太はクラスメイトの女の子のことが好き。
その相談をいつも私にしてくるのは、別に圭太に悪意があるわけじゃなくて。
私がなかなか素直になれないせいと、圭太がちょっと、かなり鈍感なせいだ。
私だって、日直の仕事くらい手伝うのに。
私だって、私だって圭太のこと……。
何度そう思ったって、口にできたことは一度もない。