不機嫌なキスしか知らない





「そこから徐々に、紗和の一途さとか、一生懸命なところとか、ちょっと弱くてずるいところも知って、いつのまにか麗奈のことは忘れてた」



初めて聞く、紘の気持ち。

不機嫌なキス以外の、紘の顔。




「……私と一緒だね」

「え?」



「私も紘の小さな言葉に、たくさん救われたよ。紘の本当は優しいところも、麗奈先輩のこと思って泣いちゃうくらい純粋なところも、気づいたら好きになってたよ」



照れくさくてそらしていた目を合わせたら、紘の頬は見たことないくらい赤くなっていた。


その表情に、ぎゅうっと胸が締め付けられる。