不機嫌なキスしか知らない





「お前が俺にバカみたいって言った時」






───『藍沢くんの綺麗なその想いを、その価値をわからない人にあげるなんてばかみたい。わからない先輩も、ばかみたい』



あの時自分が言った言葉を、急に鮮明に思い出した。

あんなに、最初から?




「自分でもクズみたいなことしてるなって思ってた。そんな自分が嫌いだった。けど、お前は綺麗な想いって言ってくれた」



「そんなの……」


「紗和にとっては大したことじゃないかもしれないけど、俺にとっては大きな言葉だったんだよ」



そっか、そうなのか。
私はあの時、ちゃんと泣いていた紘を救えてたんだ。