不機嫌なキスしか知らない




「私、行ってくる……っ」



ガタン、と椅子を立ち上がると、杏奈は大きく頷いた。


「頑張れ、紗和」



私も頷いて、走って教室を飛び出す。

空き教室。


私と紘が初めて出会った場所。



階段を駆け上がって、廊下を曲がって、まっすぐ進む。



──ガラッ



勢いに任せて開けた空き教室のドア。
中にいたのは……。





「……紘、」




紘、1人だけだった。

驚いて立ち尽くす私を見て、紘も驚いた顔をしている。