不機嫌なキスしか知らない










その日から紘は、私を見なくなった。



「じゃあ次の問題を、隣の人とペアで答え合わせしてください」



数学の授業中、先生に言われてちらりと隣を見る。


「……先生、体調悪いんで保健室行ってきます」

「あら藍沢くん、大丈夫?」

「はい」



ガタン、と席を立って保健室に行ってしまった紘。

私は1人残されて、唇を噛む。



……そこまで露骨に、避けなくたっていいのに。


一瞬そう思ったけれど、私もついこの前まで紘に同じことをしていたんだ。



話しかけられそうになれば席を立ったり、聞こえてた言葉を聞こえなかったふりしたり。


こんなに苦しいなんて、思ってなかったから……。