不機嫌なキスしか知らない










「帰るぞ、紗和」



帰りのホームルームが終わった直後。

紘に捕まる前に逃げてしまおうとバッグを肩にかけて急いで教室を出ようとした私を、紘が先に捕まえた。




「……はい」



逃げられないと悟った私は、仕方なく紘の後ろについて教室を出る。

どうしてこんなに必死に、紘は私を繋ぎ止めようとしてくれるんだろう。



無言で下駄箱まで行って、靴を履き替えて、無言のまま校門を出る。


少し前までよく一緒に歩いたこの道を、今日は気まずい空気が包んでいる。






「何で避けてんの?」







紘の言葉に、思わず足を止めた。
紘も数歩足を進めた後、立ち止まって私を振り返る。