不機嫌なキスしか知らない




「紗和、これ食った?」




突然かけられた声に、私も杏奈も声のした方に目を向ける。


購買から帰ってきたらしい紘が、私の隣の席に座った。


購買のビニール袋から新発売のチョコのお菓子を私に見せる。



「え、食べてない」

「じゃーあげる」



ぽん、と私の机に乗せられたお菓子の箱。

四角いチョコレートの中にとろけるチョコが入っているお菓子は、たしかに美味しそうだけれど。



「何で……紘が買ったんじゃないの?」



「……お前が好きそーって思って買ったから、あげる」


「っ……あり、がとう」



予想外の言葉に、また胸がキュンとする。
ずるいことばっかり、言わないでよ。