「うーん、避けてるっていうか……」


「藍沢くんは紗和に話しかけてるけど、紗和は冷たいじゃん。今までは楽しそうに喋ってたのに」



意外と鋭い杏奈は、お弁当に入っていたプチトマトを食べながら私を見る。



「……楽しそうだった?私、紘といる時」


「すごい楽しそうだったよ。藍沢くんは遊んでるって悪い噂がいっぱいあるから関わるのやめればいいのにって思ってたけど、紗和があんまり楽しそうだから言わなかったんだもん」


「そっ、か」




そうだよね。

紘と仲良くなってからの毎日はたしかに楽しかった。


授業中、教科書を忘れたふりして近付いて、ちょっかい出してくるところも。

私が悲しい時、自然にそばにいてくれるところも。

不機嫌な顔して触れるキスだって、全部。




……全部、好きになってた。