不機嫌なキスしか知らない




「え……」



驚いた声を漏らしたのは、私だけじゃなくて麗奈先輩も。



「ごめんね、他当たって」



紘は冷たく言い放って、立ち上がる。
驚いた顔をしている麗奈先輩を置いて、私のもとに歩いてきた。



「行くぞ、紗和」




私の返事も聞かずに、ずんずん進んでしまう紘。

慌てて追いかけるけれど、頭の中はぐるぐるしていて何も考えられない。



少し歩いてから、人気のない公園まできて、紘は突然立ち止まる。


そして私を振り返って、紘の吸い込まれてしまいそうな瞳に私が映る。