不機嫌なキスしか知らない



麗奈先輩は満足げに紘の頬を撫でる。



「ねえ、この子もそう言ってるし、どこか行こう?」




紘は、麗奈先輩のことが好きで。

麗奈先輩も今、紘を求めていて。

そこに私の存在はただ邪魔なだけで。



……私の紘への気持ちは、生まれてはいけないものだった。


だって最初から知ってたじゃないか。
紘は麗奈先輩のことが好きだって、知ってたのに。






紘は少し黙ってから、口を開いた。







「──無理。今日は俺、紗和のものだから」