不機嫌なキスしか知らない




きっと紘は、頷いてしまうだろう。
きっと紘とは、ここでお別れだろう。


じわりと目の奥が熱くなって、下を向く。



──わかってるよ、わかってたよ。

紘の心は、麗奈先輩のものだもんね。



何度キスをしたって。
どれだけ距離が近くなった気がしたって。

どれだけ紘が私にとって、大きな存在になったって。



紘の腰にホクロがあることを知っている麗奈先輩のほうが、ずっと紘の近くにいる。