不機嫌なキスしか知らない




圭太はまだ納得していない顔をしていたけれど、時間も迫っていたので渋々背を向けて、校庭に出て行った。


紘と2人きりになって、はぁ、とため息をつく。

何を言っていいかわからなくて、ちらりと隣に立つ紘を見る。

紘もちょうどこちらを見たから、目が合ってしまって、すぐにそらす。





「……いいのかよ。あんなに好きだったのに、なかったことにして」






紘が小さくつぶやくから、え、と聞き返す。



「アイツがお前の気持ち知らずに、他の女と幸せになるの、見てるだけでいいの?」





不機嫌な顔。

だけどその不機嫌は、私のため……?