不機嫌なキスしか知らない




「俺が紗和のこと本気で好きなら、許してくれんの?」





挑発するように圭太を見る瞳。

圭太は目を見張って、それから、戸惑ったように視線を泳がせた。



「……なに、本気なの?」


「だったらどうする、つってんの」



「本気、なら……紗和のこと、幸せにできるなら、いいけど」


「じゃあ何でそんなに不満げな顔してんの?」



「それは……」



なんだか圭太が押されていて、微妙な空気になってしまった。

ふとスマホに視線を落としたら、もう午後の部が始まる時間が迫っている。



「ちょっと、もう時間になる!圭太は出番あるんでしょ!?早く行かなきゃ!」

「でも、」




「……本当に全部、圭太の勘違いだから。
私が紘のこと好きになるわけないでしょ」