不機嫌なキスしか知らない




「そこまで、考えてくれてたんだ……」




やっぱり、本当は優しい人なのかもしれない。

だんだん紘のこと、わかってきた気がする。



最低だしクズだけど、ちゃんと優しい。

だからずるいんだ。




「でも、そうしたら紘だって……」

「なに?」


「私のこと狙ってるなんて噂が、麗奈先輩の耳に入ってもいいの?」





少し心配になって、紘の顔を伺う。

紘は面倒くさそうな顔をして、小さく息を吐いた。