「ん、おいで」




手を伸ばす紘の、暖かい手のひらに触れる。

それだけで私の心拍数が上がる。




「ちょっと、何?」



紘の腕に絡んだままの麗奈先輩が不審そうに私を見つめる。

紘は、するりと麗奈先輩の腕から抜けた。




「ごめん。こっちが先約」




信じられない、という顔をする麗奈先輩を置いて、紘は私の腕を引いて階段を上がった。


連れてこられたのは、屋上の前の階段の踊り場。屋上は鍵が閉まっているから開かないけれど、この踊り場は小さなスペースになっていて、人は普段は来ない。



階段に座った紘に続いて、私も隣に腰を下ろす。