不機嫌なキスしか知らない



何より、紘のことで頭がいっぱいだった。





午前中、そっと触れるだけのキス。


きっとその影に隠れていた、私への優しさ。

圭太と菫ちゃんを見せないように、私が傷つかないように。


そうやって守ってくれてた、紘の優しさ。



初めて見た、必死に走る紘の表情。荒い息。

拗ねた子供みたいな表情も、悔しそうな顔も、決まり悪そうに逸らした目も。


私のために、戦ってくれたかもしれないことも。



紘の本心なんて何も知らない。

何も知らないけどその優しさで頭がいっぱいで、紘のこと、もっと知りたい。