不機嫌なキスしか知らない




「し、てないよ……!何言ってるの?」


「午前中、妹尾さんと中庭歩いてたら、紗和と藍沢がいて。また一緒にいるなと思ってたら、すげえ顔近付けてたから……」




見てたのか……しかも、菫ちゃんと。
ハァ、と内心ため息をつきながら、冷静に言葉を探す。




「コンタクト、ずれちゃって」

「え?」

「紘に見てもらってたの。それだけ。だから顔が近く見えたのかも」



「……いや、それにしても近くなかった?」



まだ疑いの表情を崩さない圭太に、首を振る。



「紘はパーソナルスペースがおかしいんだよ。そういう人なの。私だけじゃないし」



そう言ったら、圭太はうーん、と首を捻りながらも頷いた。



「まあ確かに、そうだよな。あんなところでキスするわけないもんな」



「そ、そうだよ!当たり前じゃん」