不機嫌なキスしか知らない




予想外の言葉に目を見張る。


そんな私を一度も見ようとしないで、紘は水道の前にしゃがみ込む。

私のタオルを頭にかけて、表情を隠す紘。




「……とか言って、勝てなかったんだけど。だっせえ……」




聞こえないくらい小さい声。
タオルで隠した表情。



どうしてもそれが見たくて、パッとタオルを取ってみた。


不機嫌なきみの目が、私を決まり悪そうに睨む。



「……返せよ、タオル」

「私のタオルだもん」

「俺が貰ったんだから、俺の」




ムッとした紘が立ち上がって、私のタオルを奪う。


立ち上がった紘は私よりずっと大きくて、力があって、タオルは全然奪い返せなくなってしまった。