不機嫌なキスしか知らない




「なんかずっと面倒くさいから出たくないって言ってたらしいんだけど、隣のクラスからは圭太くんが出るって聞いて急にやる気になったらしいんだよね。

何でだろうね~、紗和ちゃん?」




ニヤニヤしながら私の顔を覗き込む杏奈に、驚いて飲んでいた炭酸オレンジジュースを吹き出しそうになる。



「ぶっ……いやいや、私は関係ないからね!?」


「やだ、汚ーい。
……紗和は圭太くんと藍沢くん、どっちを応援するのかな〜?」





杏奈の妄想だってわかってるけど、不覚にもちょっとだけドキッとしてしまったのは、内緒だ。


紘が圭太に嫉妬なんてするはずがないし、リレーに出る理由に私は関係ない。


……少しだけ期待してしまいそうな自分に蓋をして、もう一度首を振った。