不機嫌なキスしか知らない




「紘、ありがとう」




汚くてもいい、それが恋だよね。


それだけ圭太のこと好きだったってことだよね。

それを相手に見せたりしなければ、自分くらいは自分の気持ち、受け入れてあげてもいいんだよね。





「……つーか、あんな奴のために泣くな」


「え?」


「俺が泣かせたいのに」





私の顔を覗き込んで、不機嫌な表情で。

そんなことを言うから、不覚にも少しどきっとしてしまったじゃないか。





「やば、そろそろ開会式始まるよ!
ほらハチマキ返して!」




腕時計を見たら、開会式まであと5分。



慌てて立ち上がると、紘は気怠そうにのろのろと立ち上がる。