不機嫌なキスしか知らない





「当たり前じゃねえ?そんなの」


「……」


「好きなヤツの好きなヤツなんて嫌いになるに決まってんじゃん」




あっけらかんと言う紘の、そういうところは好きだ。


なんでもはっきり言えて、嘘がない。


私は自分に嘘ついて、誰にでもいい顔するからずるい。


そう言ったら、紘はまた怪訝な顔をした。






「表に出してないならいいだろ。相手に嫌いだって言ったわけじゃないからいいだろ。外に出してなければ、お前はただの優しい人だよ」


「え……」



「お前の中の汚い部分なんて今のところ俺しか知らないんだから、隠しとけばいいじゃん。それで抱えきれなくなったら、また俺に吐き出しに来れば?」

「っ、紘……」




紘の言葉は、決して綺麗じゃないかもしれない。

それでも誰よりも私を救ってくれた気がした。