「圭太も優しいのかもしれないけど、紗和も優しいよな。優しすぎてばか」
紘の呆れたみたいな、でも優しい目が私を見つめる。
それだけで少し泣きそうになったこと、紘には絶対秘密だ。
「ばかは余計だし、私は全然やさしくない……」
「なんで？」
「……菫ちゃんに、嫌な気持ちになっちゃう。ふたりが話してるとモヤモヤしちゃう。菫ちゃんは、何も悪くないのに」
またじわりと涙が浮かぶ。
好きな人の好きな人のこと、好きになれないのが悲しい。
そんな自分であることが悔しい。
それなのにそんなの全部隠して、圭太の前ではへらへら笑ってる自分が、いちばん大嫌い。
