不機嫌なキスしか知らない




それなのに、今まで一度も伝えられなかったのに。


圭太が告白する日に被せてこの想いを打ち明けるなんて、そんな卑怯なことはできない。



……圭太は優しいから。


本当に優しいからきっと、私の気持ちを聞いたら悩んでしまうだろう。

私を傷付けて良いのかって、自分だけ幸せになっていいのかって、菫ちゃんに告白することすらやめてしまうかもしれない。



圭太はそれくらい優しい人だから。

自分の幸せよりも、他の人を大切にしてしまう人だから。



……だから、それだけはできない。



今までズルズル勇気がないからって諦めていた告白を、このタイミングでなんてできない。

圭太は今日、菫ちゃんと幸せになるんだから。