不機嫌なキスしか知らない




「今日、なんだろ」




少し言葉を選ぶように、紘が言う。


何とは言わないけれど、圭太の告白の日を指していることは間違い無いだろう。


ストレートな紘ですら気を遣ってくれるのだから、私は相当酷い顔をしているのかもしれない。




「……うん、そう。
ちょっと緊張してるのがこちちまで伝わってきて、本当なんだなって思い知らされた」


「へえ」




興味なさそうな紘の返事。

自分から聞いたくせに、と少しムッとしたけれど、それもすぐに消える。

興味なさそうな声とは裏腹に、私の隣に寄り添って、そっと頭を撫でてくれたから。