不機嫌なキスしか知らない





「──紗和、口」



「ん、え……?」



「口、開けて」




紘の吐息交じりの声が色っぽくて、ぎゅう、と体の芯が疼いた。


操られるみたいに、言われたとおりに唇を開く。

少しだけ隙間のできたそこに、紘の舌が侵入してきた。




「んん、っ」




そのまま私を食べちゃうみたいに、甘いキスを続けた紘は、最後に軽く私の下唇を噛んで、顔を離した。





「っ、ひろ」

「俺の前でそんな顔していいの?」

「え……」

「襲われても文句言うなよ」

「っ!?」




驚いて目を見張る私に、紘はニヤリと楽しそうに笑う。