不機嫌なキスしか知らない




「紘……?」



そっと、紘の手が頬に触れる。

私の頬より少し冷たい手のひらに、思わず肩が揺れた。







「──冗談でもいいし、アイツの代わりでもいーよ」




真剣な顔が、少し不機嫌に下がった口角が、ゆっくり近づく。



逃げる暇はあったはずなのにそうしなかったのは、びっくりして動けなかったからだ。




ドクン、と心臓が跳ねる。

熱を持った紘の視線に囚われて、身体中の血が沸騰してるみたいに熱い。