不機嫌なキスしか知らない




「私が何も、しなかったからいけないのに。なのに圭太がいざ他の女の子のものになるって思ったら、すごく悔しいし、悲しい……」




ぽつりぽつりと話す私の言葉を、紘だったらひとつも漏らさず受け止めてくれる気がした。








「──じゃあ、俺にする?」






「……は?冗談でしょ」




いや、どうしてそうなるのよ。

怪訝な顔で紘を見上げたけれど、紘は冗談でもなく、真面目な顔をしていた。