不機嫌なキスしか知らない




「ココアでいい?」



保健室に行く途中。

廊下にある自販機の前で立ち止まった紘は、お金を入れてから私を振り返る。


「え……買ってくれるの?」

「早く答えろよ。ココアでいーの?他の?」

「あ、じゃあ、ココアで」


私の言葉を聞き終わらないうちに、紘はボタンを押して、ガコン、と落ちてきた缶を渡しにくれた。

それは私の好きなメーカーのココアで、また胸がキュンとする。



……まあ、それはきっと偶然なんだけれど。


私がいつもこのココアを飲んでること、隣の席の紘は知っているかもしれない。

でもたぶん、知らないだろう。

紘のことだから、そんなに私に興味ないだろう。


だけどもし私の好きなココアを買ってくれたんだとしてら、って考えたら、ドキドキしてしまう。