不機嫌なキスしか知らない



「気付いてたの?私が体調悪いこと」

「あー、なんとなく」

「……もしかしてホームルームの前に言おうとしてたのってそれ?」

「そう」




紘の言葉ひとつひとつが胸に落ちて、心をじんわりと温かく染めてくれる。


不機嫌な顔して、気だるげなくせして。


圭太すら気付かなかった私の些細な変化に、気付いてくれてしまうんだね。



私が恥ずかしくないように、紘の体調が悪いってことにして私を教室から出してくれたのも、紘のさり気ない優しさなのかもしれない。


今、私の歩幅に合わせて歩いてくれるのも、きっと。