不機嫌なキスしか知らない



「紘、体調悪いの?大丈夫?」


「……はぁ?」





私が心配して紘の顔を覗き込んだら、紘は心底呆れた顔で私を睨んだ。

はあ、と大きなため息をついている。
え、何でそんな顔するの?


不思議に思って紘の顔を見たまま首を傾げたら、紘は眉根を寄せてから少し目を逸らす。




「お前が体調悪いんだろ」


「え、」

「1人で歩けんの?抱いてやろうか」

「い、いらないです!」




慌てて首を振って、紘の後をついていく。

いつもより紘の歩く速度が遅いのは、きっと気のせいなんかじゃないよね。