不機嫌なキスしか知らない




「紘、おはよう。今日もギリギリだね」

「遅刻じゃなければいいだろ」

「まあそうだけど」




へらりと笑って普通に会話したつもりだったけれど、紘がじっと私を見つめてくるから、どきりと心臓が鳴る。

なんだろう、何かおかしかった?




「……お前、」

「ホームルーム始めるぞー」



私を見つめたまま、何か言いかけた紘の声を、ホームルームを始める先生の声がかき消した。

紘は「いや、なんでもない……」と前を向いてしまった。何だったんだろうか。




「じゃあここの問題を、この公式使って解いてみて」



1時間目は、数学。

先生が何か話しているけれど、今日はノートすら取れない。