「そういえば、心ちゃんに何か頑張ったご褒美をあげたいな」
『え?』
「ねぇ、来週の土曜日って暇?」
『うん…特に予定はないけど』
「じゃあ、僕と一緒にお出掛けでもしない?」
『え?』
「そこで僕が何か、心ちゃんが欲しいもの買ってあげる」
『どうやって。会ってもいないのに』
「僕らは今後、どんな形かはわからないけど巡り合うんだ。
その時に僕がお金を渡すから、今は心ちゃんが買う。
どうかな」
『……良いの?』
「うん。
絶対に会った時にお金は返すから。
日曜日は僕バイトが入っているから駄目なんだけど、土曜日なら」
「わかった。じゃ、お言葉に甘えちゃう。
土曜日ね」
「じゃ詳しくは前日の22日金曜日に電話するからその時決めよう。
ごめん、バイトの時間だから切るね」
『うん!土曜日楽しみにしているね』
思いきった約束を我ながらしてしまった。
だけど、心ちゃんが“楽しみにしている”なんて嬉しい言葉を言ってくれるから。
心ちゃんが喜んでくれるのなら、何だって嬉しいね。
「どうした春田、機嫌良さそうだな」
「へへっ、わかりますか?」
「もしかしてデートか」
「で、でででデート!?」
「違うのか?
お前のその顔、恋する乙女の顔だぞ」
「お、乙女じゃないです先輩!」
アルバイトの休憩時間にまかないを食べながら、先輩に言われる。
僕、乙女は良いとして、恋している顔なんだ。
心ちゃんに、僕が恋?
あの約束は、デートの誘い?
「いや、まさかそんな…いやでもなぁ」
「おーい春田?」
「でも、いや……デートだなんて…」
「駄目だ、自分の世界に入っている」
「おーい、交代だー」
「はーい!おい行くぞ春田」
「……デートなのか、やっぱり」
「行くぞ春田っ!」
「は、はい!」
デートなのかわからないけど。
楽しみにしているのは、確かだ。